税と社会保障費

国民一人あたりの税負担率は1970年から50年で2倍、社会保障負担率も同年50年間で3倍。社会保障費を賄うためと言いながら10%にまで上げた消費税は社会保障費以外にも多くが使われている。

人口減少で税収が減り、高齢化により社会保障費が必要だ。そんな大義名分ですべてが片づけられているが、国民から徴収された税金を真っ当に使用しているとは思えない。使い方を決定しているのは議員。

年度終わりになるとよく聞く話が公共工事の事業増である。予算が余るから、使い切らなければというそれである。予算は余らせれば、次回から減らされる。減らされくないから、使い切る。議員は自分の提案や支持者からの依頼があると行政に要望し、予算をつけさせることで「おれがやってやった」という人種だ。議員にも役人にも自分の身は痛くないので削減する、減らすという必要性もなければ、経済的合理性もない。無駄な事業に見えても担当職員が居て、相応の理由をつけて経費を消費する。

静岡市においても、清水庁舎の移転に100億、水族館建設に160億、歴史文化施設に60億とコロナで一旦ストップはしているものの公共事業を乱発する予定だった。それらを決定するのは市議会議員。

民主主義の回転速度を上げる

地方議会選挙等で選挙で当選した暁には、4年間の自由が与えられる。

変化の速い時代において、有権者における選択の機会が少なく、一方で当選者は安定した収益を与えられる中で楽な方に動く。それが有権者からの関心を無くしている一つの要因と考えていた。唐鳳の話はまさにソーシャルネットワーキングの時代にあった選択肢である。

(落合陽一と唐鳳との対談から)

選挙で決められる投票権を勝ち取った台湾において、「投票=祝祭」とのことだった。

日本では勝ち取ったという認識が不足している。

日本は台湾でいう祝祭性が失われた状態。日本が祝祭性を回復するには?もしくは台湾が将来祝祭を失った場合、どう再着火すればいいか?

唐鳳 投票のレベルを変え投票の「回数」を増やす。投票の項目を細分化し、数秒でも時間があれば投票できるようにするのが鍵。民主主義の「回線速度」を上げることが大事。

4年に1度の選挙で済ませるのは旧式のコンピュータを使い続けるようなもの。アクセスの回数を増やせば増やすほどフィードバックもアップデートも多くなる。それが「新しい民主主義」のあり方。

落合 台湾約2300万人、日本約1億2600万人と人口規模が違う。日本のような人口規模の多い国で「新しい民主主義」は可能か?

唐鳳 物理的にひとりひとりの意見を聞いて回るなら、古代民主主義が行われたギリシャの都市国家の規模が限界だろう。でもデジタルは違う。デジタルのネットワークはスケールフリー(1つの情報を無限に拡大・共有できること)だ。皆にとって価値があると判断された情報は、すぐに世界中に拡散される(東京都のコロナ対策サイトにプログラマーとして参加した事例を紹介)。ネットワークの中で民主主義的に導入されたアイデアは「スケールフリー」。どれだけ規模の大きな人口に対しても広がり続ける。このような新しい民主主義のやり方を広める上でも日本と台湾の距離は近い。物理的な距離の近さではなく、テクノロジーのレベルが同じくらい高いこと。進んだテクノロジーがあれば進んだ理想を叶えることができる。民主主義は完成された「化石」ではなく、「人の生活を便利にする生きたテクノロジー」。

落合 どうやって生きた民主主義を進化させていくか。そのカギになるのが「多様性」。民主主義の中でどう多様性・多元性を確保していくか。日本のいいところ・悪いところがある。多様な文化圏であれば「ほどほど」な価値が割とある。つまり、お互いが理解しえないことに関して「ここまでは理解しよう」という相互理解のラインがある。単一民族が多い日本は、完璧に理解することに力を割いてしまう。カンペキを求めてしまう。8割できていればいいのに、残り2割を上げるために8割の時間を使ってしまう。そのおかげで、例えば子どもがいじめられる理由は皆が同じ規律を求めるからだったりする。ある程度「ほどほど」で成り立つようになると人の働き方や生き方が多様になる。テクノロジー的に前進した民主主義から生まれてくる(未来への)遺産(レガシー)は(これからの)人の多様性や時間の使い方に直接跳ね返ってくる。“ほどほど”のコンセンサス(合意)で多様でいられる社会へ

―地球規模のコンヴィヴィアリティ。無限な可能性を持つデジタルな経済。そしてテクノロジーとしての民主主義。驚くほど明るい未来が説かれた今回。最後に聞きたいことは?ー

落合 「変わらないものって何だろう?」って僕はよく考えるんですよ。自然の形も変われば人の形も変わるけれど、その中で人の最もチャーミングなところはタンさんにとってどこですか?
唐鳳 人は賢人(サピエンス)ですから、知恵ですね。

台湾のオンラインディベート

唐鳳(オードリー・タン、台湾デジタル担当大臣)の言葉。

「There is crack in everything and that’s how the light gets in」

(すべての物にはひびがある。そして、そこから光が入る。)。世界は完ぺきではありません。私たちの行動が、生態系を壊すこともある。自然界、人間界のシステムの構造的な問題に、一緒に取り組むことができる。それがここにいる理由です。欠陥はあなたが貢献するための招待状です。

台湾でも、ネットワーク上で進む、参加型民主主義が始まっている。

2014年、台湾で中国とのサービス分野の市場開放を目指す「サービス貿易協定」が台湾の国会で採決を強行。それに抗議する形で学生が立法院本会議場に突入、台湾史上初めて市民による議場が占拠された、「ひまわり運動」が起きた。

当時の報道によれば、市民の間で法案の内容だけでなく、その決定プロセスの不透明性にも不満が渦巻いていた。

それがきっかけとなり、タンが参画していたg0vは省庁の約1300すべてのプロジェクトの予算配分、研究計画、KPIが分かり易く可視化され、同じ分野に興味がある人と話すことができるオープン・ソース・コミュニティを創設。

現在は1000万人が利用している。

そして、タンと11名のg0vのボランティアと共に取り組んだのが「vTaiwan」である。

vTaiwanは質の高い審議によって大きなグループを導くプロセスであり「対話を重視するメソッド」である。実際にこれを使ってライドシェアリング(Uber)規制に関する議論が行われ採用された。

オンラインディべートの空間に参加した人々は、いくつかのコメントに投票を促される。

「Uberは禁止すべきだ」「厳しく規制されるべきだ」といったものから、「市場に任せるべきだ」などといったコメントだ。

数日経つと、大まかに反対派と賛成派の相関関係が可視化される。そして、不思議なことが起こる。サポーターを得たいと思ったメンバーは乗客の安全や保険といった多くの人が賛同するコメントを投稿し始めるのだ。

その後、徐々に意見は洗練され、投票が蓄積されてゆき、最終的には大多数の人によって受け入れ可能なコメントに集約されてゆく。

「vTaiwan」のオンラインディべート空間。どこに分断があり、どこにコンセンサスがあるかを明示するMAP。コメントしている人の顔が見え、投じられるのは「賛成」と「反対」のみで、対立や批判を誘発する「返信ボタン」がないことも、実装成功の重要な要素とされる。

その後これらのアジェンダを元に、専門家、ステークホルダーと実際に対面で灯篭会を行い、その様子をライブストリーミングで公開する。

ポイントは

・アジェンダを設定する力があること

・ライブストリーミングを通じて議論を発展させられることが、

多くのステークホルダーとの協議が鍵になる。

日本で参加型民主主義を始める上でも、多くの鍵を教えてくれた。

2016年1月、総統選挙で民進党の蔡英文が総統となり、36歳という若さでオードリー・タンはデジタル担当大臣に就任した。日本では広く、新型コロナウイルス対策で台湾の天才として名前が知られたが、16歳の時にインターネット・ソサエティと呼ばれるガバナンスに関する奇妙なコミュニテとの出会いが始まりとのことだった。